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2011年12月 7日 (水)

好きこそものの上手なれ。

 本来なら、コメントのお返事で放出したネタを使いまわすべきではないのかもしれませんが、これ非常に面白いんで許して。あと元記事でZyngaなどに触れられているので、思いっきり旬がありそう。
 あと短いコメントだけでは誤解を招くかもしれないということ。もちろんわざと誤解を招くように、ミスリーディングするため(どす黒い悪意をこめて)短いコメントを書くことはありますが、今回は違う。 

 元記事は4Gamer。筆者は今更ご紹介も必要ないでしょう。知らないほうが問題です。
 記事自体とても面白いので、スマホゲー、モバゲーの開発現場についてご興味があるならぜひ、ご覧いただければよいかと。
 (開発者たちに向けた形を取りながら、資金を出す人、開発会社、ゲーマー、自分自身のような企画屋、財務屋、プロデューサーなどに向けた発信であると、私は読みました)

http://www.4gamer.net/games/000/G000000/20111205049/

 ただ、私が示したいことはコメントでも書いたとおり「第一点だけがモバゲー、スマホゲー開発固有の問題である」ということであり、他についてはゲーム開発現場を知らずとも外から予想できること、だけです。また、第十点はそれとは関係ないけど面白い。

 さらにいうと、少なくとも私が何かものが言えるくらいの知識がある経営学の発想は、果たしてこの新しい世界を説明できるのかということ。 
 ちなみにシステム開発には少し携わったことがあるし、地獄プロジェクトも知っていますが、ゲーム開発現場はもちろん知らない。
 「経営学」がもし学問であれば、なんらかの説明ができないといけないはずなんです。本当はモデル化を通じて予測ができないといけない。そう簡単にはいかないから面白いんで。

 記事では10項目挙げておられる。順に行きましょう。 

「コンシューマゲーム開発部隊がスマホアプリやソーシャルに何故適応できないか」

1.そもそもケータイでゲームする習慣がない

 いただいたコメントへのお返事で書いたとおり、おそらく10項目のうちこれだけが表題に対する根本的な回答だと思います。

 好きでもないもの、自分で興味のないものを作っている。

 そして悲しいかな、ここは「経営学」では取り扱わない部分。「嗜好」、「興味」、「愛」、「快楽」などは所与だから、それ自体は「ありき」として説明しません。
 これは「経済学」でも一緒。需給バランスの説明でなぜ需要曲線が右下がりであるか、先生は「ひとつめのリンゴよりふたつめのリンゴは価値が減りますよね」などと比喩を持ち出して説明しますよね。あるいは「リンゴが安ければまとめてたくさん買いたいですよね」とか。
 「でも私はリンゴがきらいなんです」と質問する生徒がいるとしましょう。先生は「だったらあんたの好きなものに置き換えろや、こら」という返答でしょうね。つまりリンゴがいいかオレンジがいいかは説明しません。
 そしてこの「でも私はリンゴがきらいなんです」と聞いた生徒は正しく育つと、かなりの大物になりそうですけどね。子供のとき"New York"がなぜ"New York"なのか先生に聞いて激怒された方はやがて大作家になりました。たしか司馬遼太郎先生です。

 逆にいうと、ここが「経営学」がキメラ(カイメーラ)的で面白いところでもある。結局需要側も供給側も人間ですから、上のような人間的要素が必ずある。それを捨象してしまうと、なーんにもわからない。よって最近ではとくに社会学、精神医学、行動心理学、歴史学、政治学、下手すると哲学、神学、その他諸々の学問とのコラボが花盛りになっている。
 数学と統計学のことを前書いたかもしれません。取り扱う対象が人間社会に関するものであれば、経営学と同様に統計学の分析にあたっても、世の中(人間)に対する興味と知見、世知(せち)までもが必要になってきます。長くなるので実例は別の機会に譲ります。

 「好きなもの」、「興味があるもの」、「愉しいもの」。これを「愛」と書いてしまうと、あの「ゾウの時間・ネズミの時間」を書かれた生物学者の先生に怒られてしまう。「愛は盲目」であり「愛は勝つ」。だからダメなんだと。「愛」は(ジーザスや阿弥陀仏のものでもない限り)そもそも偏愛なんですね。溺愛というのもある。ネットでいうところの「信者」になる。

 そうではなくても、少なくとも自分でやっていて愉しいかどうかが何事でも根本でしょう。
 いや、そうではない、仕事だからイヤなことでもやらなくちゃならない。お前だってゲイダーさんの言葉「ゲーム完成までの残り20%のクソ仕事を泣きながらでもやらなくちゃならない」を引用していたじゃないか。
 でも、その苦痛は「完成」という喜び、愉しみが目前にあるから耐えられるんでしょう。無限にクソ仕事をしなければならないと感じるなら、転職しましょうよ。苦痛が続くと人間ろくなことにならないよ。

 ほとんどこの記事で言いたかったことが終わってしまった。あとは第十点目を除いて軽くいきます。 

2.素材に懲りすぎる

 コンシューマのつもりで作ってるんですよね。そして筆者によればその行動様式は頑固で、容易には変わらないと嘆いています。
 イノヴェーションに立ち会っているのに変化に鈍感で後から右往左往するのは一般的ですよね。そしてこの根本原因は上の1.です。

 私個人の話ではMMOやラノベを「食わず嫌い」していたのと同様です。人間の行動様式はある面は非常に頑固です。じゃなかったら絶滅してたから。
 「食わず嫌い」や「無視」はただ単に注意・注目しないことではありません。「目をそらそうと命をかけて必死に努力している」ことです。なぜか。自分の存在意義が危ぶまれる、自分が組み立ててきた自分なりの世界観が崩壊するのが怖いからです。

 だから解決策は、「存在意義とか世界観とかリセットしろ」、「とりあえずモバゲーをしろ」なんでしょうけどね・・・。難しそうだ。  

3.リリースしたら仕事が終わったと感じてしまう

 これはゲーム業界に留まらない普遍的な問題ですよね。確かにコンシューマは売り切り買い切りの面があったからそれで許されたというのはある。これも根本原因は1.である。
 ARPUはAverage Revenue per Userですから、暗黙裡に時間(月あたりかな)の概念が入ってる。売り切り買い切りにはない発想です。時代が変わったのだから行動をアジャストしないといけない。単発商品のアフターセールの概念に似ていますが、ずっと細かそうです。

 本来システム構築は、開発と保守運用のふたつの部分から構成されているはずです。コンシューマ向けは基本的に開発で終わってしまう。オンライン・ゲームへの移行で保守運用の世界が大事になったのに、なにしろ(ゲーム業界では)そこに元々人材はいなかったわけだから苦労するのはわかりますが、一般的情報システムではどっちかってと当たり前の話なんですけどね。もちろんここでいう「運用」は、一般のようなシステムのお守り、不具合・ユーザークレーム対応(定額課金MMOもこっち)だけではなく、「商売」そのものを含む(アイテム課金制はこっち)ことになります。

 そしてここで筆者が述べている「統計の数字のあっち側にある顧客の顔を見ろ」が、上で言った統計学の醍醐味でもある、世の中(人間)に対する興味と知見、世知を踏まえて数字を分析すること、に通じます。

4.開発費と広告宣伝費のバランスが悪い

 ここで大事なのは金額規模はともかく、顧客に訴求するタイミングのほうかな。従来型の方式、まだ形すらないものを大々的に宣伝する風潮を咎めています。開発者だけではなく、あらゆる関連分野の行動様式が変化を求められているということかな。

5.バックヤードの意識が薄い

 ゲームに限らない根本的、普遍的な問題。私が「うまくマネジメントされたマイクロマネジメント」と言うやつの根幹を、筆者はKPI(Key Performance Indicators)で説明しています。
 様々な課金アイテムの設計すらなく商売を始め、実売動向を見ずに闇雲にセールを打つやり方で成功するわけがない。KPIの最大の利点は先行指標性、「気がついたときにはもう手遅れ」というリスクを減らすことにあります。予め先の流れが読めるように設計するのがよい設計です。もちろんそれは原初的には管理者の有している仮説に委ねられます。  

 KPIは実はそのように管理者の先入観に基づいて予定調和的に設定されるから、文中あるように誰も見たことがない、ぶっとんだものであれば、そのような手段は無効ですが、先行勝ち組をミミックしたクローンが多数なんだから、バックヤードも先行を模倣しろというのは頷けます。

 この話は、ヴィデオ・ゲームなどでは特にリテールが結局疲弊して行って、最後はデジタルに負けてしまう話でも書きました。マネジメントのIT化の恐ろしさはこういう部分にあります。悲しいことにリテールでは一般に、なにが売れ筋か容易に「瞬時に」把握できないんです。必死にIT化して把握できたとしても「瞬時に」対応するのは極めて難しいんです。例えば日本であれば、文中出てくるコンビニがこの世界を(ある程度)実現しています。

(蛇足ですが、日本のコンビニの最大の弱点は、現金払いが主流であること。どういう顧客かは性別と漠然とした年齢層しかわからない。どこでも必死にポイントカードを普及しようと努力してるのは、顧客囲い込みという面は薄くて、顧客データのある程度詳細な属性を知りたいからですよね。「名寄せ」といいます)

 選手交替の過程で、まず規模の大きなリテールしか生き残れない段階が来ます。そして規模が大きい(地理的展開が広範囲である)が故にこまめなマネジメントが難しい。在庫をバラバラに抱えちゃう。なのに欠品出しちゃう(利益を逸失する)。Amazonがアメリカのリテール大規模チェーンを撃沈した過程ですね。デジタル・コンテンツの場合はさらに影響のマグニチュードがでかいでしょう。

6.企画費を取ろうとする

 時代の変化を無視しているだけですね。つまり有名クリエーターたちは「目をそらそうと命をかけて必死に努力している」のです。仕事なくなっちゃうからね。
 ちょっとひねると、陳腐な言い回しですが「大きな物語」の終焉を再確認するということかな。ビッグネームのクリエーターの名前を出せば皆が脊髄でとびつく物語はもう終わったんです。アトム化とか島宇宙化とか言われるように、もうそんな世界じゃないんですね。多数の人が共通して有する興味なんて、なんとか48とジャニーズ以外には成立しません(というか、そのそれぞれの、過去に例のない異常な数のタレント品揃えが事態を如実に物語っているんだな、今気がついた)。テレビの衰退も当然そこに起因します。
 ラノベ市場のカオスぶりにも通じます。無名の多くのクリエーターが割拠する時代になった。少なくとも今のところは。 

7.いきなりでっかいサーバーを調達する

 これはよくわかります。なぜなら、ハード・インフラの調達がシステム開発の中で一番簡単で頭使う必要がないと思っちゃうから。ハード・ヴェンダーもやいのやいの言ってきて、色々教えてくれる。外部情報が豊富で悩む必要がないと思い込んじゃって、ちゃちゃっと決まっちゃう。
 プロジェクト全体の流れなんて関係なく、簡単なもの(ヴェンダーの催促がうるさいのもある)から手をつけてしまう。しかも本来コンテンツ依存のはずのハード・インフラが先に決まっちゃうから、なんとコンテンツがハード・インフラ依存というわけわかんないことになる。よくあります。関連するのはPM論、クリティカル・パス論ですね。でもこの話題は原始的。

8.メジャーなバージョンアップ計画を立てていない

 3.に似てますね。これも普遍的で、後に「一発屋」と呼ばれるビジネスは大抵これ。
 既存商品の成果に安住してしまって、次期、次世代のことを考えようとしない。
 逆にいうと、大企業であっても30年もたないといわれた時代ですら今はもう昔。今は10年、5年もつかどうかもわからない。3.は商品・サービス単体のライフサイクル論ですが、こちらはもう少し広い。企業・ビジネスのライフサイクル論まで拡大して考えるべきなんでしょうね。 

9.コンテンツのモジュールなど共通化に関心がない

 まだ言ってるんですね。モジュール化の話題が出たなんてもう何年前だろう。

 FFXIVの開発現場なんてもちろん知りませんが、サルベージが難航するだろうなあ、と思っているのはこれもありますね。第一陣開発が全滅してしまったんで、第二陣は第一陣のたどった足跡を追跡するところからはじめる必要がある。もっとすごいことをいうと第一陣が何をやったか乏しい材料から「推理する」必要があるのではないかな。でもモジュール化を普通にやってるプロジェクトや会社には、サルベージの必要なんてあまりないか。
 これは生産効率性のお話です。製造業でいう標準化、セル化、部品・工具共通化などですね。そしてうまくやれば、製造業なんかよりもずっとインパクトが大きいはずなんですよね。

10.稼ぐことに躊躇する

 すでに記事もかなり長くなってきました。これはちょっと込み入った話になりそうなんで、次回に。 

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