フォト
無料ブログはココログ

« Skyrimがきてしまう。 | トップページ | Skyrim、PC日本語版? »

2011年11月11日 (金)

Dragon Age と The Elder Scrolls

 今うんうん唸っているテーマに関連しそうなので、Dragon Age と The Elder Scrollsの関係でも考えてみよう。
 断っておきますが、比べてどっちが勝ったとかまさっているとかいった、ガキみたいな話にはなりません。そんなものは個人の嗜好で左右される。

 もう少し普遍的なことがいえないかな、というのが狙い。ま、失敗するかもね。

 なお本来「世界」と書くべきところ、敢えて「社会」と書いている部分があります。後から使うつもりの社会学者・宮台真司氏の定義が通常のものとは違うので、混乱しないようにするため。セダス大陸は世界じゃないの? Skyrimで主人公が歩くのはワールド(世界)じゃないの?という疑問が湧くかもしれません。野生とか自然とかそれらもひっくるめて「社会」と言い切っています。気になったら「世界」と読み替えてください。今のところは問題ないはず。

 色々なアナロジー(比喩)があると思います。もちろんアナロジーの限界をわきまえて言わなければならない。ふたつの事柄が「似ている」ということは裏返せば「似ていない」部分があるということだから。

 それぞれを「箱庭」と「砂場」と呼ぶ手がある。いまいち定義がはっきりしていないが、強引に自説に寄せてしまおう。

 DA2に代表される「箱庭」RPGは、「社会」を中心に据えています。BioWareの開発者が何度も口にするようにDragon Ageの物語は「セダス大陸とそこで生活する住民たち」が主役である。よって(偶発的に選ばれた)主人公は必然的にコンパニオン集団という小さな社会と係わりあいつつ、セダス大陸という大きな社会に向き合うことになる。
 「箱庭」RPGはパーティー・プレイの形式を取ることが多いのはある意味で必然であるのかもしれない。

 通常の箱庭RPGであれば、その「社会」に係わりあう主人公の物語で終わります。「空の軌跡」シリーズがそうですね。人間関係に非常に重きを置く。FFの一部にもありますね。中期の作品はみなそうかな。JRPGはすべてそうである、ただし、といって例外を挙げたほうが早いかもしれないくらい。これには理由がありそうです。それは後述。

 おっと、忘れないように書いておこう。FFXは、あれは民俗学でいう境界人とマレビトの物語ですね。「シン」を倒す宿命を帯びてしまった巫女のユウナは、いかなる共同体にもまともには入り込めない存在、境界的存在(マージナルマン)。外部からの来訪者(異人、まれびと)であるティーダの力を借りて、使命を全うする。
 泣いたでしょ? そら泣きますよ、だって物語原型だもの。他にもありますね。例えばIco。主人公が異形であるが故に部族から追放された境界的存在で少女がマレビト(これは見方を変えると逆も言えるかも)。境界的存在の例に「ナウシカ」を挙げる人も多い。広い意味では「カリオストロ」だって境界的存在(クラリス)とマレビト(ルパン)だし、そもそも宮崎駿の物語の原型ともいえる。「もののけ姫」もわかりやすい。姫は人間でも自然でもない境界の世界にいる。主人公は遠く東国から訪れた「マレビト」。
 The Witcherのゲラルトも眠狂四郎も境界的存在といえます。きりがないね。

 だが、Dragon Ageの世界では、「社会」の外側により大きな存在があることが前提となっている。問いは「箱庭」がなぜそこにあるのか、だ。不在の神メイカーの教えを伝えるチャントリーはそのことを明示的に示そうとする。「宗教」は「社会」より大きな存在です(そうでなければ、人々が完璧に理解できるなら、そもそも宗教の存在意義がない)。

 ところが「宗教」もまたそれより大きな何かを前提にしている。DAではメイカーなる「全能神」がその一つ。またフレメスが予言するように「抗えない大きな変化」なるものもある。如何ともしがたい事柄があるわけです。

 そうした存在は、それ自体が目に見えない、手に取れない、コミュニケーションできない存在です。到底不十分ながらも、言葉でしか描くことができない。作り手はシナリオのセリフを熱心に書き込み、プレイヤーに売りこまなければならない。メイカーを登場させずして、不在の神メイカーについて語らなければならない。抗えない何か、が何かすらわかっていないのに、それについて語らなければならない。

 「BioWareはシナリオが売り」ではなく、必然的にシナリオを磨き上げなければならないものを作っていると考えたほうがいいかもしれない。
 誤解のないように触れておきますが、BioWareのDnD準拠のゲーム(Baldur's Gate、Neverwinter Nights)に登場するDeities、神々、いわゆるパンテオンは「社会」の中の存在です。なぜなら対話できるから。レスポンスがあるから、ご利益・祟りがあるから。

 JRPGが「社会」を描きこむのも、日本がアニミズムだから。森羅万象に八百万の神が宿るというだけあって、社会が全体でありその外まで規定していないから。何事ですら、山河が相手ですら「話せばわかる」と思っているから。嘘だと思ったら地鎮祭とか竣工式とか、なぜやると思います?
 この世界に意味不明で「抗えない力」などないと思っている。天災への接し方ですら基本的な発想は「なにか意味があんだろう、仕方あんべ」。あの「震災は天罰」などといった、空気を読むことすら拒否した発言がそれを象徴しているんでしょう。

 DnD準拠のBioWareゲームが膨大なセリフを必要としたのは、DnDフェイルーン亜大陸の複雑な世界情勢を描かなければならなかったことがひとつ。
 もうひとつは、悪のBaal神の末裔として生まれたBGの主人公が何ゆえに善をなすのか、NwNでは戦う善の神Tyrのしもべであるパラディンはいかにして堕落してゆくのか、といった、ぼんやりとですが「抗えない力」に関するモチーフが顔を出しているからもある。
 ただし、DnDはライセンサーWtoCの許しなくして「社会」、フェイルーンの物語世界をぶち壊すことはできませんから、DAに比較すると物語は「社会」と接する「個人」にぐっとよったものになってしまいます。そしてまさにそれが、BioWareが人様のDnDではなく自社IP(フランチャイズ)を欲した理由でもある。「好きなように造って好きなようにぶっ壊す」ため。

 Mass Effect 2のDLC、Overlordには、私が最初誤訳をやらかしたセリフがあります。

 イギリスの19世紀ヴィクトリア朝時代の詩人・劇作家ロバート・ブラウニングの次のセリフが元だった。
“Ah, but a man's reach should exceed his grasp, or what's a heaven for?”

 拙訳は「何言ってますか、人は見えないところ、手の届きそうにないところまでも目指すべきなのですよ。そうでなければ天国は何のためにあるのですか?」

 まさにこういうことですね。
 ちなみにMass Effectの世界では、「銀河文明の意味は何か」(箱庭はなぜそこにあるか)という問いに対して、「リーパーズの餌場でしかない」という答えを提示している。リーパーズとは交渉こそできませんが、対話はできる。存在がハッキリしている。勝てるかどうかはともかく戦えてしまう。Mass Effectは想像を絶するほどの時空の広がりを描こうとしていながら、上の一行で説明を終わることができる。今後もうひとひねりあるのかもしれませんが、今のところは外敵の襲来と戦う銀河文明「社会」の物語でしかないんです。BioWare開発者が「シェパードはあくまで軍人だからね」というように、非常に単純な物語です。

 DAシリーズ、特にDA2が膨大なセリフを必要とするのは、メイカー、抗えない力、セダスを襲う変化の予兆などを示さなければならないから。それはセリフでしかできない。なぜなら目に見えた瞬間にそれらの超越した何かが矮小化されるから。
 また私が抗えない力に「運命」や「定め」などとレッテルをはらないのも同じ理由です。そうすることによって、まるで人が何かを手中に収めたように勘違いするから。そもそも個人の運命や定めの話などではない。社会あるいは文明全体がどのような混沌状況に置かれるか、不確実性に支配された社会がどう振舞うかがテーマだと思われるからです。

 一方でMass Effectがハードボイルド的なぶっきらぼうな語りで済んでしまうのは、それが物語のスピード感、宇宙空間における無常観を示すのに最も合っていることもありますが、最大の理由はリーパーズを含めた全てを目で見える形で提示できるからです。何百万年前の出来事ですら、宇宙をさ迷う難破宇宙船を見せることで示す。説明はあまりいりません。
 一番もたもたしているのがゲスという集団意識の説明ですが、ヒューマンとのハイブリッドのような対話可能な代表者を登場させたり、現代のコンピューター・ネットワークのメタファーを用いることで済ませてしまった。まあ、これは仕方がない。

 「砂場」RPGのTES(Morrowind、Oblivion、そしてまだ見ていないがSkyrim)もまた「社会」を事細かに描き込んでいます。そこでは確かに人々が息づき、生活し、争い、恋をしているだろう。そしてDA2と大きく違うのは、その「社会」自体を探索し、争いに巻き込まれ、打ち勝っていく「個人」が主役であることです。

 TESでは「社会」の外の存在を意識することは希薄です。「砂場」は目の前に与えられた。その意味を問うことはしないし、させない。たしかに異次元からの侵攻は存在しますが、例えばOblivionのそれは目に見え、戦えるわけだから現実世界の軍事大国と置換可能でしかない。その点でDA2のブライトも天災や疫病のメタファーであると言えます。Skyrimのドラゴンと戦えるように、DAのアーチディーモンとは戦える。それらは「抗えない力」でも、想像を絶する超越した存在でもない。

 TESは一人称視点(あるいは主人公の肩の上からのぞく三人称視点)を貫徹します。主役となる「個人」はプレイヤー。「社会」と係わりあうプレイヤーに特別な言葉は、実は必要ありません。冒険者として地元民たちと最低限のコミュニケーションさえできれば、野生動物や化け物に殺されないだけの武芸があれば十分なのです。
 TESはシナリオが弱い、ストーリーが不在などといわれますが、それらは元々「いらない」ものです。同様の「砂場」RPGを指向するTwo Worlds IIでも、やはりセリフは単純なコミュニケーション手段でしかありません。

 同一フォーマットを用いたFallout 3もまた同様です。「社会」の隅々まで歩き回る主人公が何を見て、プレイヤーがどう感じたか、それだけが大事である。様々な出来事に共通する意味づけなんかいらない。しいて言えば、やっぱこうなってるよな、とナットクできる要素があればいい。

 Fallout: New Vegasでは、開発したObsidianがやたら凝った設定とプロット、メチャクチャ細かく書き込んだセリフを見せてくれました。たしかにそれによってFallout 3にはない不思議な味わいは生まれた。
 一方でFallout 3に比較して「窮屈である」と感じる人もいるでしょう。Fallout 3ではEnclave、Brotherhood、その分派など敵対はしているものの、誰が誰とどう戦っているのか誰にもわからないままですが、New VegasでNCRとカイザーというふたつの大組織が地理的にも地図を二分している構図にしてしまえば、カオスぶりは大きく減ってしまう。
 人によっては「いらない」はずのストーリーを押し付けられたと感じるでしょう。DLCであるOld World Bluesのようにごく限られた範囲で濃密なストーリーを展開すると、これはうまくいったわけだから、ストーリーが悪いわけではないのですが。

 DA2は、「抗えない力」に翻弄されてもがき苦しむ(危機的状況をどうにかして克服しようとしている)「社会」と、そうした「社会」に対する主人公(プレイヤー)の接し方を描いている。逆に言えば、「社会」がどう抗おうが大きな変化は訪れるし、そのもたらす影響、混沌は計り知れないという期待(諦め)がある。
 主人公が逆境にあること、それを克服することはテーマじゃないんです。現にそうである場面はOriginsでもDA2でもそんなに多くはない。

 TESでは広大な土地(「社会」と言っておきます)を歩き回ること、それ自体が目的であり、「個人」である主人公(プレイヤー)がその経験をどう感じるかが大事である。遍歴、武者修行、冒険者の原型ですね。

 JRPGの多くは、「社会」の中の濃密な人間関係を描こうとする。なぜなら日本にはもう濃密な人間関係が身近にあまり存在していないからかもしれない。逆境に置かれて苦悩するのも、ここでは主人公かその近しい人物である場合が多い。

 Dark Soulsについては以前も書きました。主役はもはや「個人」どころじゃない。その個人の「行為」自体が目的である。その点ではスーマリや、もっと古くはスペースインヴェーダーと変わりはない。物語・ドラマはプレイヤーが「いや苦労したわい」という点にある。物語・ドラマの外にある。

 どれが良いとか悪いとか、優るとか劣るとか、そういうことではないんですね。

 ただし私がThe Witcher 2の物語にはピンとこなかった感想を抱いたり、FFXIII(零式含む)の背景設定に「はあ?」と思ってしまうこととは、深い関連があるのかもしれない。 

 

« Skyrimがきてしまう。 | トップページ | Skyrim、PC日本語版? »

ゲーム」カテゴリの記事

Dragon Age II」カテゴリの記事

Mass Effect 2」カテゴリの記事

Fallout: New Vegas」カテゴリの記事

The Elder Scrolls V: Skyrim」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Dragon Age と The Elder Scrolls:

« Skyrimがきてしまう。 | トップページ | Skyrim、PC日本語版? »

Dragon Age 2 プレイスルー

2019年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30