フォト
無料ブログはココログ

« Big Trouble in Big China | トップページ | ヴィデオゲームのせいで男はダメになりました。 »

2011年10月 7日 (金)

スパゲッティー・トッシング

 これも何度繰り返したかわからない話題ですが。

 日本のコンビニに通っていれば誰でもわかることでしょうけど、清涼飲料水、アルコール類(もどきも含む)、カップラーメン、スナック類、いったい年間に何種類発売してるんでしょうと思うくらい毎週、毎月、新製品が出てはほとんどがまた消えていく。

 世界中どこもそうだろうと思ってはいけない。全く逆だ。日本以外にこんなことが続いている国はひとつもない。ヴァラエティからいったら、日本の数百に対して十種類前後。桁が一つ、下手すると二つは違うはずだ。
(最近は大陸国に行っていないので、今じゃあっちも同じだよというなら指摘して欲しい。多分違うと思うけどね)

 そういうとふたことめには「エコがっ!」とか目くじら立てる奴がいる。廃棄がっ、ムダがっ、資源がっ。

 崩壊前のソビエト・ロシアで生活したいなら、ご自由にどうぞ。
 確かに、棚に何十種類並んでいても自分が買うものは大抵決まっている。目新しいものをちょっと試すくらいはする程度。

 じゃあ、自分がいつも買う商品だけ、ソビエト・ロシアみたいに一種類ずつしか置いていないとしたらどうか。ソビエト・ロシアと違って行列しなくても買えるのであれば、実質影響はないのである。
 でも、やっぱイヤだよね。

(ちなみにモスクワの行列は何かを目的に並ぶものではなかったそうだ。行列ができていればとにかく並ぶ。何で並んでるのか前の人に聞いてもその人も知らない。相当前の方に聞かないとわからない。でもそんなことをしている間に行列が伸び続けるから、見かけたら脊髄反応で並ぶ。だから市民は誰でも日常でかい袋を携帯しているのが常識であったという)

 そういったコンビニの食品の分野だけじゃなくて、日本だけ異常なヴァラエティが存在する世界は他にもきっとあるでしょう。薄々あれもそうかなというのはあるが、私が自信を持って書けないだけ。

 本業以外の分野で(信じられないでしょうけど本業があるんです!)真剣にウォッチしているヴィデオゲームの世界だって、4Gamer(しか頼るメディアがないというのは問題あるかも!)を眺めていれば(中身はともかく)凝りもせず物凄い数のタイトルが出続けているのが手に取るようにわかる。しかもモバゲーの多くはいちいち記事になっていないはずだから、それでも氷山の一角か。

 日本は島国で、鎖国好きで、内向きで、98.5%が同一民族で、ほとんどが日本語が母国語で、80%から70%程度が神道か(と)仏教を信仰しており(ま、大多数はなんちゃって宗教?)、当然のようにモノカルチャーで、もっというとモノトーンで、金太郎飴(死語か)で、おしなべて社会から抑圧されていてダメとかいう連中には、必ずそのヴァラエティの話をつきつけることにしている。誰であっても容赦はしない。
 むっとされるけど、矛盾しないまともな解説はいまだかつて聞いたことがない。(数字は手っ取り早いんでネットで閲覧できるCIAのカントリー・ファクトブックによる)

 日本のラーメン屋の数とそのヴァラエティにも驚愕するものがあるが、これは他国だってデリなど探せばヴァラエティは結構ある。パック旅行で決められたコースしか行かないとわからないけど。欧米旅行の際には、ぜひ自由時間にそういうところでランチなどを食べて、ぼったくられて泣く経験をされたらいい(実はパック旅行に組み込まれている店のほうがずっとぼったくられ度が大きいんだけどね)。

 おっと前振りがまた長くなった。

 http://www.gamespot.com/features/6338540/aaa-or-bust/index.html

 GameSpotのこの記事。
 これから書くのは私の感想、というよりも自慢である。 
 これは新自由主義経済下において避けられない、イネヴィタブルな道。
(あれ、お話はこれからなのに、もう帰っちゃうの?)

 アクティヴィジョン(Call of Duty)以外全滅の世界を恐れるGameSpotの記者が、業界アナリストにe-mailでヴィデオゲーム産業の今後について質問したというお話。

 FPSはいずれ首位CoDと(恐ろしく離された二位の)BFと、そのふたつしか残らない。それ以外は死滅するというのは私がだいぶ前に書いた。
 記者は、さらに極端なケース、CoDしか残らないケースを危惧している。
 発想は全く同じだ。日本人だから私のほうが(武士の情けなどに期待して)甘いだけかもしれない。

 昔、まだコンパック・コンピューターがヒューレッド・パッカードになる前、バカ勝ちしていた時代のBusinessWeek誌上の同社の見開き広告が忘れられない。
 そこにはアメリカのどこかの街角の、つぶれて閉鎖されたPCショップの写真が三つくらい載っていた。つまり、コンパックはプレダトリーな(弱肉強食に生き残った)会社である、と誇らしげに宣言していたわけだ。
 そのコンパックもHPに呑みこまれ、さらに今HPはPCビジネスが重荷でどうしようもないと嘆いている。一部はビジネスを打ち切ったようだ。時代は流れる。人生は長い。

 アメリカ人であろうGameSpotの記者は、もちろんマルクス経済学など勉強したことはないはずだ。だから資本が人間を疎外するとか、資本は自己増殖のみが目的であるとか、そういうことは見聞きしていてもピンとこないかもしれない。
 でも自由競争の行き着く果てには何があるか、それはアメリカ人であればみんな身をもって経験しているはずだ。

 衝撃的なのはこの数字だ。NamcoBandaiは、2010年の会計年度には239SKUで21百万本売った。今年度は同じだけの本数の売り上げを見込んでいるが、SKUは前年度より60も少ない。実に25%減である。

(注)SKUはshelf(stock) keeping units、ロジスティックスの専門用語だが、ここでは「タイトル品揃え」程度の理解で十分。ほんとはややこしい)

 つまり、ヴィデオゲーム商売では、いわゆるAAAクラス、大物重視、大作指向の傾向が加速しているという。

 アナリスト氏によれば、コンソール・ビジネスは(ヴィデオゲーム業界の中では)最も予測しやすい分野である。
 「市場が成熟すると、企業はスパゲッティを壁に投げつけてどれが貼り付くか(生き残るか)眺めていた世界から、売り上げ予測手法を身につけて精度を高めてくる」

"As markets mature, companies tend to move from throwing spaghetti at the wall to see what sticks to becoming more methodical and precise with their releases."

 マーケティングの教科書どおりの発想ですが、これが日本のコンビニの商品棚では通用しないこともおわかりですよね。いまだにスパゲッティならぬカップ緬を壁に投げつけている!(もちろん、褒め言葉です)

 「今の時代、クソゲー(a flop)はパブリッシャーにとって破滅(doom)を意味するが、リスク・リワードの関係は変わっていない。過去は1、2作がまあまあの成功を納めて全体で利益を産むためには、10作リリースしなければならなかっただろう。今日では、顧客の購買動向の理解が進んだことによってクソゲーを産むリスクは大きく減ってきた。少数の大規模なタイトルに開発投資を集中することができるようになった。
 兵器のアナロジーがよくわかるだろう。爆撃機が目標に1発当てるため100発落とさなければいけなかった時代から、一発必中の時代に変わったようなものだ」

 なお、ビジネスの世界におけるミリタリー・アナロジーは一切信用しないほうがいいです。全く違う世界だから。パブリッシャーは顧客を爆撃してるんじゃないし。タリバンの拠点は動かないけど、顧客動向は変化しますし。ま、マーケの連中の発想はこの程度ということがわかればいいかな。

「逆にソーシャル・ゲームのような新規分野ではそこまでの情報がないから、スパゲッティー・トッシング(spaghetti tossing)戦略が用いられている。ただし、そこでも情報が集まってきているから、やがて少数大規模の世界に移行するだろう」

 ここでGameSpotの記者は私の質問を代弁してくれている。
 「でも、スパゲッティー・トッシング(spaghetti tossing)は、イノヴェーション(innovation)と同義語では?
 そしてスパゲッティーだらけの壁がありますよね。Wiiとか、DSとか、コンソールのFPSとか、ギター・ヒーロー、ダンスゲーム、フェイスブックゲームなどなど。それらはイノヴェーションであり、大きな成功を収めてきた」

 「イノヴェーションと実験は不可分だ。でも技術的制約というコインの裏面がある。X360はリリース後6年を経過して、もうあまりイノヴェーションの余地はない。
 次世代コンソールや、高価なファイアーウォールなしでどれだけイノヴェーションの余地が残されているだろう? Call of Duty Elite(有料サービス)が好例だ。私はHDゲームにおける2011年最大のイノヴェーションだと思っている(訳:ほんまかいな?)。MSとSonyはEliteサービスのために、おそらく相当な費用のかかる、オンラインサービスの大幅な改変を余儀なくされた。CoD以外のタイトルの場合、MSやSonyがそんなことにつきあっただろうか?

 どんな技術でもイノヴェーションは最初の33%くらいの期間に発生する。時間が経てば市場が成熟し、技術の制約もあって、もう壁に投げつけるスパゲッティーは残っていない」

 Call of Duty Eliteが今年最大のイノヴェーション? お前頭悪いんちゃうか?
 読んでいるこっちがだんだん腹立ってきたが、記者はきちんとつっこんでくれている。

「ビッグ・プレイヤーたちがなんだかわかんない新兵器とやらを駆使して、スパゲッティをできるだけ壁に投げないようにするのは、産業全体にとって良くないことでは? 最大のイノヴェーションがDLCのマップパックですって?」

 言ってやれ言ってやれ!

 最後はアナリストの言い訳。「リスク回避戦略が業界にとって悪いことだとは思えない。多くの情報があって追加リスクを取る必要がなく、技術的制約でイノヴェーションの余地が残されていないのであるから、当然の帰結だ。(出ました、キーワード、natural results)
 次世代コンソールが出ればまたパブリッシャーは実験を迫られるだろう。どうなるか? いや、まだスパゲッティーは投げられていないからわからない」

 さて、まじめに読まずに書き始めたので、私には予期せぬ知見が得られました。

 ・マーケティング理論こそflopである。

  ま、これは予想どおり。今更のようにガッカリ。

 ・業界アナリストは、資本主義の走狗、亡者である。

 ここまでハッキリそうだとわかったのは驚きである。CoD Eliteがなぜ素晴らしいか?
 アクティヴィジョンが顧客からさらに金をむしりとれるから(利益があがるから)である。
 どう考えても、パック旅行で指定されたレストランで受ける以上の「ぼったくり」なのに。

 そしてCoD以外のタイトルにMSやSonyは金のかかる改変を買って出るようなお付き合いはしない。その他で相手にされるのは辛うじてEAのBFかな。小規模のFPSはコンソール・ビジネスの入り口でシャットアウトされてしまうわけだね。

 ・GameSpotの(少なくともこの)記者は、とてもまともだ。その心配もよくわかる。
 
 記者が、ヴィデオゲーム全体のヴァラエティ、「多様性」を喪うことに本能的に危機感を抱いて発している(恐竜だけになっちゃったら滅んじゃうんじゃないのという)問いかけに、アナリスト氏は(資本主義システムにおいて利益最大化を計るパブリッシャーが現在のリスク回避行動パターンを取るのは)「当然の帰結」であると答える。恐竜万歳!

 ここまで蝕まれてるんだね。

 本当にこのまま滅びの道を進むのかなあ。

 「FPSならなんでも取り揃えてございますよ。CoDのスタンダード、CoDのエリート、CoDのコレクターズ!」

 資本主義、行き着く先は社会主義。マルクスの予言、そこまでは正しかった。
 「革命によって大衆が主人公になる」というところは間違っちゃった。

 でもガラパゴス日本は、最後まで気がつかずに、凝りもせず、10%の名作を生むために、90%クズといってもいいような、しょーもないゲームを作り続ける(カップ緬を壁に投げつけ続ける)んだろうかなあ。

 ほんと日本人でよかった・・・。今のところは?

« Big Trouble in Big China | トップページ | ヴィデオゲームのせいで男はダメになりました。 »

ゲーム」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: スパゲッティー・トッシング:

« Big Trouble in Big China | トップページ | ヴィデオゲームのせいで男はダメになりました。 »

Dragon Age 2 プレイスルー

2019年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30