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2011年10月24日 (月)

フェイク・スティーヴ

 「日本語版ニューズウィーク」先週号に、偽ジョブズこと、ダニエル・ライオンズ記者のエッセイが載っていた。

(お断り)

 知らない方がここに飛び込んでこられて、「私も愛読者です」などと言われると大変迷惑なので、断っておきます。

 別に私はこの雑誌の「愛読者」などでは全然ない。毎週見かけたら駅売りを買ってはいるが。むしろ「ヘイト読者」のほうが近いかもしれない。以前からあたかも世界に日本が存在しないかのような記事で埋める編集方針に怒りを覚えていたが、震災後は打って変わったように「日本が、半島が、大陸が、原発が」と破廉恥なまでに売り上げ優先に走っている。そういう記事は日本の他の週刊誌がはるかに得意な分野であるのに。つまり、全然売れていなくてあせっているということだ。

 私がしつこく読んでいるのは、もちろん他の日本語メディアでは余りなぞらない世界中の紛争や動乱の情報を(しかもアメリカ人の視点の情報を)欲しいからもあるが、この雑誌の死に際、どうやって終わっていくのか見たいという興味のほうが大きい。

 もちろん本家のNewsweek自体、アメリカの読者に向けたものであるから、そのまま記事を持ってくれば日本のことなどまず載っていないのは当たり前。だが日本語版はそれをそのまま有難がって掲載していたわけだ。

 そして最近では、スティーヴ・ジョブズ逝去の記事をいつまでひっぱんねん!

 ご多分に漏れず、本家Newsweekの誌面も以前はApple賛歌のオンパレードだった。ところが、そのAppleが既存メディアを叩き潰す将来が予見できると、突然アンチAppleに鞍替えした。丁度Newsweek自身の経営が破綻寸前であったというのも理由にある。もちろん、既存メディアにとっての「寄生虫」であるGoogleに対しても同様のパターンで、最初は諸手をあげて絶賛していたが、やがて「悪の企業」扱いになっていった。最近ではfacebookにまでケンカを売っているようで、手当たり次第という感じになっている。

(本家Newsweekは、かつてのオーナーであったThe Washington Post Companyからとある資本家に(一説によると価額1USD、及び全ての負債を引き取る条件)で売却され、その後2011年にWebニュース・オピニオン・サイトのThe Daily Beastと統合されて誌面を刷新している)

 偽ジョブズとして五年前から(最初は匿名で、途中で身元がばれてからも)ブログを書いていたダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)の回顧風エッセイが愉しい。

 この話ご承知の人も多いだろう。残念ながら英語版も日本語版もWebで見つけることはできなかった。ライオンズのこれまでの記事の一部はWebで読めるので、しばらくすると登場するかもしれない。そう期待できてしまうこと自体が、既存メディア凋落の理由のひとつでもあるのですが。

 私自身は、Appleにも、ジョブズにもなんの興味もなかった時代の話なので、このエッセイで事の次第をはじめて知ったわけだ。

 フォーブス誌で「退屈」と言ったら「退屈」に失礼なくらいの退屈な仕事(さもありなん)をしていたライオンズが、単なる暇つぶしのジョークではじめた偽ジョブズのブログ。あまりの人気沸騰(一時期では月150万件のアクセス)にやめられなくなったそうだ。
 (後にジョブズの体調悪化の際に中断し、死期が本当に迫っていると見られた頃に中止したそうだ)
 
 そのブログの中身については、(とても面白いが)ただのジョークなので触れないが、人気が出てしまった後で、ライオンズはあわててジョブズの人となりを研究する。そこで見出したジョブズ像が、非常に卓越していると思う。

 気難しく、失敗が多く、善悪が同居していて、暗黒のエネルギーに満ち溢れ、エゴイストで、ナルシストで、部下に辛らつで、人をこきつかうことを厭わず、平気で他人を侮辱し、ユーモアを理解しない男であったという点だ。
 そして実績はちょっとしたマシン(電子機器)を世に送り出しただけ。

「僕はアップル製品が好きだ。だが、ジョブズが『世界を変える』などと語り、自分をガンジーやアインシュタインやマーチン・ルーサー・キングと同列に扱うようなCMを流すのを見ると、いくら何でもやりすぎだと思う。ポリオのワクチンを作ったわけじゃない。飢えをなくしたわけでも、エイズを治す薬を開発したわけでもない。コンピューターとスマートフォンを作っただけだ。
 確かに優れた製品だが、それが世界を救った? 所詮は消費者向けの電子機器、みんな、頭を冷やしたほうがいい」

 私がずっと抱いていたスティーヴ・ジョブズ像そのまま。ライオンズによれば、それがジョブズの信仰していた仏教精神とどう折り合いをつけていたか信じ難かったそうだが、そこにこそブログで笑いを取れるポイントがあったわけだ。

 (この話は、以前任天堂の山内翁が語っていた次のような話を想起させる。「ヴィデオ・ゲームはこの世の中に一切必要ないのだ。世界平和になんの関係もないものだ。我々は必要のないものを売りつけているのだ。だから任天堂は大変なんだ」)

 この記事で紹介されている個々のギャグもどれも秀逸だが、最高なのはむしろリアルのほう。偽ジョブズのブログが世間を沸かしていた頃、シリコン・バレーのある会議に招かれたジョブズがビル・ゲイツと二人で登壇したときのこと。

 ビル・ゲイツ。「断っておくけど、僕は偽スティーヴ・ジョブズじゃないからね」

 会場爆笑。

 司会者に「偽ジョブズを読んだことは?」と聴かれ、ジョブズは「なかなか笑える書き込みもあるね」と答えたというが、私の意見としては、これはもちろん嘘だろう。だってジョブズにその手の辛らつなギャグが理解できるとは到底思えないし、むしろ逆上していたはずだしね。ライオンズは「本人が偽ブログを読んでいた」と感動しているが、賢い彼のことだ、感動しているふりかもしれない。

 カリスマ企業経営者に美徳なんていらないのでしょう。むしろ美徳には経営者として邪魔なものがあるかもしれない。

 私個人は、上にあげた秀逸なジョークもその例だが、「まんまと成功したことによって」突然目覚めて、その後気が狂ったように働き始めたビル・ゲイツのほうが、ずっと人間的で好きだ。後に慈善家となったこと、「教育」に目を向け始めたことなど(それらの是非はともかく)からも推察できるが、ビル・ゲイツはそこで、自分は果たして「神に選ばれし者」にふさわしいのか、という深刻な内なる葛藤に苛まれていたのだと思う。

 ライオンズが言っているようにただの電化製品。私は、どう考えてもMicrosoftやGoogleのように20世紀/21世紀を代表するエポック・メイキングな企業になるに決まっている相手とAppleを同列に扱うのは違うと思う。少なくとも今のところは。

 だが世界のメディアは、今のところアメリカ、英語圏メディアが支配している。アメリカ人の本国人びいきは誰にも止められない。そして、彼らにはもう余り他に誇るべきもの、あるいは誇るべき人物が残っていないのだ。

 ウォール・ストリートを占拠する連中は、Appleのマシンで連絡を取り合う。おそらく皆Appleが大好きなはずだ。
 もちろん私だって、オプション、フューチャーなどの金融商品の古き良きほのぼのとした世界まで併呑して、「デリヴァティヴ」なる奇怪な、オカルトチックな化け物を発明したウォール・ストリートのウィザーズ(魔術師たち)や、それを見過ごした政治家、FRBなどの官僚たちのことは果たしてどうかと思っている。みんな資本によって操られているだけなんだけど。

 だが今やMicrosoftも、Googleも、あるいは既存の「悪の企業」でいえばExxonMobleまでも時価総額でパスしてしまったというAppleだって、大資本には違いない。形式的には十分「悪の企業」なはずだ。
 でも、ウォール・ストリートのデモ隊に聞けば、Appleは「他とは違う」と答えるだろう。デモ隊に参加していない人だってアメリカ人なら「違う」というに決まっている。あれは「いい」のだと。

 「美徳」に走ったはずのゲイツは「悪の帝国」を築いたと批判される。
 「悪徳」のジョブズが「善なるもの」を生み出したと賞賛される。

(なおGoogleは、その出所自体が「悪」。彼らが内部的には「悪(evil)には染まるな」というモットーを有していることがその証拠)

 それがなぜか。それがわかれば苦労はしないし、わかったとしても、そんな大事なことを、こんなところに書いたりしない(笑)。

 将来、もし大陸国がアメリカに変わってヘゲモニーを握るようなことがあれば、パーソナル・コンピューターも、スマートフォンも全部大陸で発明されたことになるだろう。

 なんか、そこらへんかなあ・・・。

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