フォト
無料ブログはココログ

« Circulation of Elite | トップページ | Circulation of Elite(3) »

2011年10月 3日 (月)

Circulation of Elite(2)

 さて、循環史観とはどういうものか。

 それだけなら、先の記事で書いたように一言でいえてしまう。

 "There is no progress in human history. "

 言い換えて、あまり扇情的ではない表現を使えば、「歴史は一般に、同じところをぐるぐる回る」。

 ただし、これだけで「社会的な発展すらない」という意味ではないのでご注意。

 薄々お気づきだと思いますが、パレートの経済学的な功績は、数学的な検証を積み重ねられているというか、まがりなりにも検証に耐えうるという一方で、社会学的な功績は、彼本人が「非理性的な行為」に基づくと考えているように、思想、アイデオロジー(イデオロギー)の面が強い。

 ただし、循環史観を再現しようという数学モデルの研究も進んでいるそうで、その前提となるシナリオは次のようなもの。ロシアなどで盛んな分野だそうで、農本主義的発想ではある。佐藤優氏によれば、ロシアは今でもガチガチの農本主義だそうだ。

(こういうものを、あんましマジメにやっても面白くないので、例えばシド・マイヤー先生のCivilizationシリーズなんかを念頭に置いて考えると、正確さはないが、愉しくわかりやすいかもしれない。
 もちろんヴィデオ・ゲームのCivilizationは、人類文明は時代と共に「発展」するという発想に基づいていますが、例えば「人口爆発による飢餓・暴動」、「Golden Ageが到来した」、「セレブレーション・デイズ」などという循環史観の発想もそこここに見え隠れはしています)

・人口が、その土地の農作物が賄える最高レベルまで到達してしまうと人口成長率はゼロ近くまで落ちる。

・一般住民の生活水準の低下により社会システムは飢餓の深刻度が増したり、暴動が多発するなどの大きなストレスを受ける。

・本来、農本主義的な経済システムは変化に対する堅牢さを維持するための蓄積を有しているのだが、50年から150年の間にそれを喪失し、人口動態崩壊(Malthusian catastrophe)を経験することになる。深刻な飢餓や疫病が増加し、内紛が続発するなどの災害が多発するため、人口は劇的に減少する。

・崩壊の結果、自由に用いることのできる資源が入手可能となり、ひとりあたり生産と消費が増加していく。人口成長は復活し、あたらしい社会人口動態サイクルがはじまる。

 マルサスの人口論(人口爆発論)はお聴きになったことがあるだろう。上でいうMalthusian catastropheとは、マルサス学説に基づくカタストロフィー(破綻・破滅)をいう。

 人口論は、ダーウィンの進化論への強力な支援になったほか、ローマクラブの「成長の限界」という報告書(1972年)の発想の根底にも流れている。「成長の限界」の警告は、人口増加、環境破壊、石油などの資源利用のレベルが当時のまま続けば、人類の成長は100年以内に限界を迎えるというものであった。

 石油枯渇問題、地球環境問題への注意喚起を図った功績はあるものの、そもそも曖昧なデーターや前提に基づくトンデモ科学であるという批判がある。また地球全体での繁栄が継続できないなら一部の発展に限るという、非常に危険な人種差別的な発想を生んだと批判もされているので付け加えておく。地球規模の陰謀説まである。
 また最大の批判は、事後的な指摘であるが、報告以降に発見された石油の可採埋蔵量がどんどん増加していったことだ。「動的分析」を怠ったというものである。

 なお、戦後日本(および先進各国)のエネルギー政策が核燃料発電にシフトをはじめたのは、第四次中東戦争(1973年)が引き金となったオイル・ショック(オイル・クライシス)のためばかりではなく、直前に発表された、この「成長の限界」の影響も大である。

 そして今また人類社会は、地球温暖化問題に関して、根拠薄弱なトンデモ科学である、一部地域の発展に制限せざるをえない、というふうにまったく同様の騒ぎを繰り返している。そういう意味では「歴史は繰り返している」のかもしれない。

 根底の発想が農本主義だからといって、循環史観が普遍的ではない、とは言い切れないことは、ローマクラブの「成長の限界」を紐解かなくても明らかである。日本人にとっては食糧問題のみならず、資源問題、環境問題、格差問題、わざわざあげたてる必要もないだろう。

 正しい、正しくない以前に人々の「漠然とした不安・恐怖」に訴えかける説であるところが、重要かもしれない。

 パレートのCirculation of Eliteは、(歴史は結局同じサイクルを繰り返すという意味で)この循環史観に形式は似ている。

  •  だが着目しているのは、食糧でも資源でもない。社会の指導層、エリート層だ。
  •  
  •  誤解を恐れず非常に簡単に言ってしまえば、次のとおりだ。

     革命など(それに限らない)権力体制変更によって引き起こされる支配層の交代に伴ってときのエリート集団が放逐されても、その後に支配層の地位につくのはもう一つ別のエリート集団である。
     下層の者たち(定義は難しいがふたつのエリート集団以外の者たち、一般大衆)が代わりに権力の座につくことはない。
  •  そして歴史とは、このふたつのエリート集団の間で権力を交互に交換し合うことである。
  •  よって人類の歴史に進歩はない。
     歴史は貴族(上流階級)の墓場である。ギロチン台に昇るのは常に上流階級の支配層であるから。
  •  
  •  パレートは、比喩として現在支配層にあるエリート集団をライオン(lions)、そうでないほうのエリート集団をキツネ(foxes)と呼ぶ。
    (ここは原文をちゃんと読んだらちょっと間違いかもしれないが、ただ面白いので残しておく)
     これは日本人にはとても判りやすいのではないか。江戸時代末期に特に顕著となった、幕府(武家)と朝廷(公家)の権力の二重構造をまるで知っていたかのような比喩である。
  •  ちょっと待てと。では、一般大衆はそうした体制変更になんの関係もないのか? 
  •  そうではない。少なくとも革命や、民主主義における政権交代においては一般大衆の力が原動力となる。なくてはならない場合も多い(必ずしもそうではないのは、日本人なら明治維新を想起すれば一発でわかる)。
  •  だが大衆はあくまで別のエリート集団のフォロワー、あるいはサポーターであって、大衆自身が権力の座につくことはない。

    (明治維新について言えば、「官軍」の錦の御旗を手に入れるか入れないかで勝負が決まったと言う説はある。一般大衆が戦さに巻き込まれたことはあっても、自発的に銃や刀を取ることはなかった(そもそも持っていないし大規模な徴兵もない)。しかし万世一系と教えられてきた皇族への思い、その大衆心理は主たるプレイヤーたちである、ふたつのエリート集団の行動に間違いなく影響していたのではないだろうか。いわゆる「大義名分」である)
  •  なんだか、それって危ない話じゃないのか。階級差別を前提にしていないか?
  •  そうでもない。そうでもないが、ちょっと話が込み入ってくる。
  •  詳しくは次回に。

  •  なお私も勉強しながら書いているのでとても愉しい。今回は読者数は気にしないことにする(笑)。
  •  
  •  

    « Circulation of Elite | トップページ | Circulation of Elite(3) »

    ゲーム」カテゴリの記事

    コメント

     明治維新前後には「ええじゃないか」騒動と呼ばれるおもしろい現象が関東から四国にかけて起きてますが、確かに直接的な関係はないですね。
     江戸後期にはすでに日本人は平和ボケのスキルをもってたんですね。

     ああ、やっぱそこに来ましたか・・・。あんまり詳しくないのに明治維新は偉そうに書くんじゃなかったかぁ。

     21世紀に日本人がなんとか48の国民投票で一体なにを決めていたか来世紀には謎になっている、とかそんなかなあ。

     伊勢参りは以前から行われていたみたいですけど、幕末に爆発的に流行した理由はこれから書くことにこじつけると「漠然とした不安」なんですかねえ。
     
     エリート層(佐幕、倒幕どちらも)は太平天下でいくら腐っていたとしてもれっきとした戦闘集団ですから「黒船まじやばい」ってのはわかってた。しかもアメリカだけじゃなくて列強各国艦隊がうようよ近海に出張ってきていて、実際に衝突もあった(下関戦争・下関砲撃、生麦事件・薩英戦争)。長州征伐のため米価高騰して全国で一揆はあった。
     
     よくわかんないけど、エリート層(両方)は国内外で何が起きているかしっかりと見極めていたし、今後の準備も進めていたが、大衆層は漠然と不安だった、ってのはどうですかね。 

    この記事へのコメントは終了しました。

    トラックバック


    この記事へのトラックバック一覧です: Circulation of Elite(2):

    « Circulation of Elite | トップページ | Circulation of Elite(3) »

    Dragon Age 2 プレイスルー

    2019年9月
    1 2 3 4 5 6 7
    8 9 10 11 12 13 14
    15 16 17 18 19 20 21
    22 23 24 25 26 27 28
    29 30