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2011年7月27日 (水)

不気味の谷

 ってのはご存知だろうか。Wikipedia(jp)にも「不気味の谷現象」という項目がある。
 何しろ元々日本のロボット工学者が編み出した言葉らしい。

 簡単に言えば、人間に似せて人造的なシミュラクラ(もともとはロボット、このブログ記事では3Dモデルを含む)を作ろうとする場合、そのシミュラクラが人間にまったく似ていない場合、むしろ機械的すぎて不恰好で親しみを感じさえするのであるが、ある程度似てくると途端に「不気味さ」を感じ始める。ここがグラフに書くと「谷」になっている。

 やがて本当にシミュラクラが人間そのもの(これはまだ人類は実現していないことになっている)に近づくと、がぜんまた「親しみやすさ」が増していく、という説。
 学説というよりは疑似科学と言われるように、なにかの根拠があって言っているわけではないそうだ。まるで科学的学説のように扱われることへの批判もある。

 なお、シミュラクラ(simulacraは英語の複数形であり、単数形はSimulacrum)は私が勝手にそう呼んでいるだけ。ロボットというとどうしてもメカニカルな巨大ロボットのイメージがついてしまう。シミュラクラだといえば、人間そっくりに作られたお人形さんがしゃべり出す、動き出すイメージにならないかなと思ってそうした。
 そうすね、見た目で攻殻機動隊のイメージね。あれは頭脳はまだ人間だからシミュラクラではないけど・・・、って大脳さえも人造脳に取り替えてるからどこまでほんものなのか?

 ちなみに仏語のシミュラクール(simulacre)はフランスの思想家、ジャン・ボードリヤールの創造した概念で、オリジナルなきコピーをさす。フランス語で「にせもの」。ぱちもん。実体をもたない記号がひとり歩きして現実が喪失されること。ハイパーリアル。

 ボードリヤールは上の造語を編み出した「シミュラクールとシミュレーション」、「象徴交換と死」などが有名だが、湾岸戦争を契機に一般大衆にも知れ渡ることになった。

 彼が「湾岸戦争は起こらないだろう」というエッセイを書いた後に、本当に米軍の空襲がはじまってしまい、「湾岸戦争最初の負傷者」とマスコミから面白がって揶揄されたのである。それにもめげず、「湾岸戦争は本当に起こっているのか」、終戦後には「湾岸戦争は起こらなかった」という書籍を出した。
 悔し紛れ、ではないようだ。そもそもこの戦争は「本物か?」という投げかけ。果たしてこれは「戦争」と呼ぶのか? 「にせもの」ではないのか?

 アメリカは自らがディズニーランドであることを隠すために、ディズニーランドを造った。

 正しくは、「ディズニーランドとは、<実在する>国、<実在する>アメリカすべてが、ディズニーランドなんだということを隠すために、そこにある」だそうだ。アメリカという国家丸ごとがディズニーランド化してしまえば、境界自体に意味はなくなる。

 そんなボードリヤールったって、何も難しいことはない。シミュラクールといえば、ヴィデオ・ゲームぜんぶそれ。なんとかミクそれ。ぶっちゃければアイドルも全部そうだ。もっともっと言えば、ボードリヤールはそもそも大量生産時代の工業製品を指していたはず。書籍なんつうものがそうですね。まだ原初的生活を送っている部族にとって「まったく同じふたつの書籍」が存在すること自体「不気味」で「呪術的」なのだ。いったいどれが本物なんだと!
 デュプリケーション(複製)に慣れてしまった私たちは「なんのこっちゃ」と思うかもしれないが。ではあなたが遊んでいるゲームでも読んでいる書籍でも、どれが本物?

 L. A. Noireのメイキング風景を観たIGNのブロガーが、士気チェックに失敗している。
 「ああ、またしてもヴィデオ・ゲームの品質のハードルあけちゃってるよ。困るじゃないか」という趣旨。大好きだったMass Effect 2、そのフェイシャルがもう陳腐化してしまって観ていられないという。

 IGNの記事はここで。

http://www.ign.com/blogs/darthjanio/2011/07/21/has-la-noire-ruined-video-game-storytelling

 記事内でも触れられているYou Tubeのヴィデオはここ。

http://www.youtube.com/watch?v=u8bL0z-vMHw

 L. A. Noireはやっぱ一度はプレイしなきゃダメみたいだ。

 しかしここまでくると、不気味さの谷もへったくれもない。
 私が世間一般並みの感覚を有しているという前提ですが、これは「特段不気味ではない」と感じる。もう谷を超えてしまったのかどうなのか? それともこれでもまだ実は「似ていない」のかな。

 "Heavy Rain"では、モーション・キャプチャーを駆使して造り上げたゲーム世界が一時期話題を呼んだ。ストーリーは「心が軋む」というよりは、私にはあまりに「なんだかなあ」で「心が砕け散った」が。
 彼の意見によれば、L. A. Noireのストーリーも(Mass Effect などに比べたら)大したことはないそうだ。

 だがL. A. Noireでは、今度はフェイシャルまでとことんやっている。エポック・メイキングである。

 私が「不気味」なのは映像じゃない。まさにアメリカ原子力空母艦隊のような、莫大な予算、大変な装備、多数の要員を駆使してじゃないと、3Dゲームは造れなくなるんじゃないかと危惧するのだ。

 そこまでとことん追究してしまう、彼らのその根性が「不気味」だ。
 「手加減」というものは知らないらしい。「按配」というのも辞書にないらしい。
 New Vegas: Old World Bluesのサイエンティストたちと何が違うんだろう。

 サイファイ的に言えばこの先進んで行く世界では、俳優はもはや「パーツ」でしかない。
 サンプリングしなければならない「表情」だけ手に入れれば、あとの改変は自由に行うことができる。
 すでに「声」はもうサンプルの扱いになってきているわけだ。

 (ああ、そういう外挿法的未来、当たったためしがないからやめろって? だけどね、こんくらい近づいてくりゃ成立すんじゃないかな。たしかに知性までいくとシンギュラリティ問題出てきますけどね。ここでは見た目、容姿の話だ)

 俳優がほんものかどうかだって、そのうち誰も気にしなくなる。

 そんなの、なんとかミクでとっくにその世界にはいちゃってる?
 はいっちゃってるな。みんな、なんとか48の「にせもの」で結構騙されたしな。

 それって「不気味」じゃねえすか?

 

 
 

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コメント

 「にせもの」。懐かしいですね。
 まさにボードリヤールやフーコー、種村季弘、攻殻機動隊なんかをごちゃ混ぜにした卒論のテーマでした。
 何という若気の至り、担当教授のめんどくさそうな顔を思い出しますw

 さてL.A. Noireですが、私はまだ何かを切り開くものではなかったと思いました。

 CGやアニメの表情の表現は、ある意味定型的な、作り手と受け手の間で暗黙の了解となっている、お約束のしぐさなんかが未だにほとんどを占めています。
 我々はそれを理解しているから、特に不自然さを感じずにそれらを鑑賞することができます。

 ではL.A.Noireはどうかというと、役者の演技が全て反映されることで、ここがおもしろいとこですが、役者の優劣がもろにでてしまいます。
 今までの暗黙の了解やお約束といった鑑賞前提が破壊され、実写映画の厳しい評価になってしまって、いろいろと演技が気になって軽くしらけることに。

 結局、ゲーム会社がこの技術を生かすには、ハリウッドのベテラン俳優たちに全ての人物を演じてもらうぐらいやらないと厳しいんじゃないかな。
 まあ、でも、アメリカさんは確実にその方向に進んでいってるんですけどね・・・
 うーん、「不気味」っすね。

 まさか卒論、ネットにありませんよね?
 こっちも昔読んだボードリヤール、うろ覚えなところを調べたくて検索したら、日本語で出るわ出るわ・・・。
 Wiki(J)がダメな理由がハッキリした。つかWiki(J)いらない。調べるのに何も困らないだけじゃなく、二、三の論文(卒論もあった)読みふけってしまった(笑)。
 ボードリヤール、フーコーは、たしなみですしね・・・。

 LANが「エポックメイキング」は、ブロガーの意見。わたしの意見と誤解されるように書いてしまったようです。失礼。
 なるほど、演技自体が透けて見える。ある意味不気味ではなくしらける?
 ハリウッドのべテラン俳優あんな面倒なこと付き合わないでしょう、キャメロンあたりがやれって言わない限り。しかもギャラが・・・。
 ありがとうございます、やっぱいっぺん遊んでみよう。 
 

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