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2011年6月22日 (水)

「国のない男」再読。

 いつになったらDA2のやつ再開するのだ、と誰も思っていないでしょうが、まだ燃え尽き症候群の残り火が鎮火していない(ん、矛盾してるか?)。

 ちょっと違うお話。いちおうここの「掟」に従ってDA2などのRPGゲームには絡めるよ。でも興味がなければスルーで。

 ひとつは、例の善悪、秩序混沌のDnDアライメントに絡めたお話。
 もうひとつは、どうしてDA2のストーリーがいまいちあれなのか(笑)に関するお話。そいつは次回かな。

***********

 カート・ヴォネガットの「国のない男」("A Man Without a Country")を再読した。 
 日本語版が出版されて間もなく条件反射で買ったはず、かつ読んだはずだったが、内容を見事に忘れている。
 とかく読書なんざ、自分のおかれた環境によって、まったく身にならない、頭に残らないこともあれば、同じ本であるにも係わらず、一字一句がありえないくらい記憶に残ることもある。

 上述の書籍、そこらへんに置いてあったので、ふと気になって扉を開けてみて驚愕した。

 私ってば、なんでこんなの見落としていたんだ! しかも本の一番最初だ。

"There is no reason good can't triumph over evil, if only angels will get organized along the lines of the Mafia." (KVの署名)  

 実際にはすべて本人の手書きで全て大文字(キャピタル)であるが、読みにくいだろうから勝手に直した。

 訳者の訳はこうだ。

 「善が悪に勝てないこともない。
  ただ、そのためには天使が
  マフィアなみに組織化される必要がある。」

 私が漠然と思いついていて、なんとか言葉にしようとしていたことがアッサリ言い切られている!

 旧ブログか、その前か、あるいはこのブログか忘れましたが、映画「ダークナイト」こそ善悪、秩序混沌について見事に描いた稀に見る作品であると書いた。

 そして、クリストファー・ノーランのこの作品が、アメリカ(を中心とした英語圏)のあんちゃんたちには異常なまでに絶賛され、受け入れられたのに、日本のお友達の受けはさっぱり・・・、だったのも異様な光景だと思ったとも書いた。

 それは映画が2008年上映であり、2001年の例の事件とそれに続く中東での戦争がまだ終わってもいなかったこと、そこから導き出される必然として、アメリカを中心としたあちらでは「正義とはなにか」、「悪とはなにか」というテーマが当時大きくクローズアップされたこと、なども関係あるだろうから、天下泰平の日本万歳なんだね、と思っていた。

 それに「そもそもバットマンは日本でイマイチだろう」というのはあるかもしれない。「バットマンなんとかアサイラム」は、あちらではとにかく絶賛されたヴィデオ・ゲームだったが、なんと日本語版売り上げは3万本・・・。
 でも日本人はクリストファー・ノーラン大好きなはずだし、それは監督本人だってわかってるはずだ。そうじゃなきゃ「インセプション」にわざわざサイトーさんが登場しない。あれは興行上の理由だけじゃないよ。 

 「稀」である理由の一つ、最大の理由のひとつが、DnDでいう「混沌にして悪」、ケイオティック・イーヴォル(CE)なんざ、そもそも商業メディアで表現不可能だからだろう、とも思っていた。

 まあ、必死に探せばあるんでしょう。実は私も思いついているものはある。殺人事件などを扱ったマイナーな映画であればあってもおかしくはない。でも「セヴン」は違う。「ハンニバル」も違う。いくら邪悪のメーターが振り切れたって「混沌」のメーターには関係ない。どちらも「秩序にして悪」だろう。

 メジャーな作品ではほぼ皆無ではないですか?

 「邪悪」は満足しても、同時に「混沌」を満足することは難しい。

 辛うじて近そうなのが「指輪物語」のあの邪悪な存在かなあ・・・。最後までいかなる存在かとらえどころがないので曖昧ではあるが。おそらくDnDの創設者たちがイメージしたのもあの存在なのかもしれない。

 ハリポタの宿敵は違う。せいぜい「秩序にして悪」か「中立にして悪」だ。お子ちゃま向けだからね。坊ちゃん嬢ちゃんたちをあんまし怖がらせてもねー。
 シス卿、違う。サイロン、違う。 
 MEのリーパーズ、「秩序にして悪」かな。

 悪が組織だっちゃったら、だいたいダメだね。ショッカー違う、デストロン違う、死ね死ね団違う(誰も知らんか)。

 DAのダークスポーンは、本能らしきものに衝き動かされている存在だから、本質的に「邪悪」じゃないな。「混沌にして中立」かな。ディーモンはもちろん「邪悪」な存在だろうけど、DAの場合は「混沌」ではない。
 CRPGでまあまあいい線いってるかなというのは、BioWareのBaldur's Gateシリーズに登場する敵役(一作目よりは二作目)。そもそも破壊神の末裔(バールスポーン)の物語なんで、入り口からそういう設定ができている。
 同じくBioWareのNeverwinter Nights、二つ目のエクスパンション中盤の山場に登場する天才(なんとかと紙一重)メイジ。
 そこらは「混沌にして悪」という設定にこだわって造形してる風情があった。
 つうかBGには、たかがCRPGなのに「こいつゼッタイ生かしておかねえ!」と思わされてしまう幼児連続殺人鬼なども登場する。

 DAがちょっち物足りないのも、そうした「悪」の存在がキャラがいまいち弱いからかも。ブラッド・メイジ連中も一部を除くとなんだかね・・・。
 (フレメスについては、果たしていかなる存在か、現時点ではまだわからない)

 DnDの昔の版でもデヴィルが「秩序にして悪」、ディーモンが「混沌にして悪」と区分されていたが、案の定、ディーモンのキャラがあまりたたないことになってしまった。単にアルケミカルシルバーの武器で傷つけられるか、コールドアイアンで倒せるかの違いになっちゃう(悪魔は普通の武器では一般に傷つけられないことになっている)。

 「ダークナイト」のジョーカーが非常にいい感じで「混沌にして悪」を表現していると私は思っている。  
 つまり自分の行動の動機も結果などもどうでもいい。自分が愉しがるかどうか、回りが苦しがるかどうかが重要で、騒ぎが大きければ大きいほど、破壊の規模が大きいほどよろしい。自分さえいれば組織などいらない。マフィアなどの組織悪(秩序にして悪)まで手懐けて、適当に使役してはポイする。

 ノーランすげえ、と思うのは冒頭の銀行襲撃シーンだ。まずこの銀行はマフィア支配下にあるわけだが、組織悪(秩序にして悪)なんてジョーカーの前ではてんで相手にならないことを証明する。さらに自分の手下(中立にして悪)だって片っ端から殺していく。分け前を独り占めするため? そうかもしらんが、どちらかというとそのほうが愉しいから?

 ジョーカーはやがて悪の世界で完全優位に立つ。そんな悪には、ホワイトナイト(秩序にして善)、ダークナイト(混沌にして善)、警察司令(中立にして善)、裁判所(秩序にして中立)が束になったって太刀打ちできないんだよ? というテーマが示される。
 善は悪に対して最後まで勝っていない。

        善         中立       悪

 秩序  ホワイトナイト   裁判所     組織悪(マフィア)

 中立  警察司令               そこらのチンピラ 
                           ワナビー・ジョーカー  

 混沌  ダークナイト   ワナビー・    狂犬(ジョーカー)
      (バットマン)   バットマン

 このマトリックスが綺麗に完成する物語なんてあんましないのだ(あったら教えて欲しい)。偶然とは思えない。
 ノーランがDnDオタクとは思えないから、コミックマニアというシナリオライターあたりが意図的にやったんではないかと私は疑っている。
 
 でも綺麗なマトリックスに騙されてはいけない。この関係は「非対称」なのだ。そこが重要。
 ヴォネガットが言っているのもそこ。
 どだい善は、余計なハンディキャップを負っているので、もとから悪に対して劣位にある。
 ひじょーに卑近な例でいえば、「無辜の者を戦いに巻き込むな!」、「くそー、人質を取るとは汚いぞ!」とかいうやつ。逆の立場にしたら「無辜ってなあに?」、「人質ってなあに?」でおわり。

 もうちょっと深遠な話で言えば、「では悪を裁くには抹殺すればいいのか?」というお話もありそう。ジョーカーに法の裁きを受けさせようといくら腐心しても、「法」なんてものを何とも思っていない相手にはいくらでも逃げ道が用意されている。いくらでも殺せる場面はあるが「バットマンはゼッタイに悪人を殺さない」。相手がたとえ大都市の住民全員を皆殺しにする気満々の悪であっても。
 絶望で眩暈がするようなハンディキャップではありませんか。

 ああ、まさか勘違いされているとは思わないが念のため。ヴォネガットが「マフィアなみの組織」と言っているからといって、それは比喩であって、別にマフィア撲滅などの話ではない。
 善と悪、神々の戦いレベルのお話だ。
 善のサイドにも、悪のサイドが用いているような掟のようなものを導入しないといけない。それでも果たして善は善のままでいられるのだろうか? 
 含蓄のある文章だと思います。

 そもそもこの話をするためには、マトリックスでいう善悪ってなんだよ?という説明をしなければならないんだろうけど、まさか「人殺しは悪です」とか、「お父さんお母さんを大切にしよう、一日一善」とか、そういう幼稚な発想の読者はいないと思って割愛しました。もちろん大抵の場合はそれでいいんだろうけど、そう簡単に割り切れんから話題にしてるんじゃないか。

 例えば今話題らしい「ママ友」の話にだって「混沌にして悪」は登場するかもしれないんだぜ?

 

 

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