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2011年6月 6日 (月)

いい忘れたこと。

 ゲイダーさんインタヴューの際に、欧米ヴィデオゲームの「主流」についてちょっと整理しました。

 ひとつ大事なことを言い忘れていたので、追加します。

 DA2のコンテンツもすぐに書くから、待ってくれ! 

**********

 まずBioWareの開発プロジェクトの組織。エンドロールかクレジットみりゃわかるんですが、RPGではゲイダーさんたち「ライター」が威張ってるわけでもなんでもなく、実はシニア・マネジメントじゃないんですね。ゲイダーさん個人はBioWareのシニア・ライターなんでライターの中では上役ですが、「シナリオ」は一部門でしかない。リード・デザイナーの手先です。

 一番上にプロデューサーがいて、DAだと現場のトップはリード・デザイナー。映画でいうと監督といってよいのかな。MEシリーズにはリード・デザイナーはおらずプロジェクト・ディレクターと呼んでいて、あのケーシー。BG2のようにディレクターとリード・デザイナーが兼務の場合もある。
 
 プロデューサーってのが、先の記事で出てきたヒーサーのようなプロマネ連中を統括したり、トレジャリーと資金繰りの相談したり、パブリッシャーのEAとの窓口、マーケティングのMBAどもやPR担当たちと販売促進・広告宣伝戦略の打ち合わせまでやったりするわけです。あー、著作権とか色々面倒だからロウヤー連中ともね。プロジェクトの人事権も持っているし、当然、BioWare創業者ふたりのお偉方へのレポートもここの役目。

 このうち「資金」に注目します。システム開発で資金といったら、これはもう「人間」と同義です。「時間」と同義と言ってしまってもいい。「金=時間」、もちろん経済活動は広い意味でそうですけど、ここではより鮮明でしょうね。
 「主流」ゲームではコスト全体を圧迫しまくってるといわれる巨額の広告宣伝費はここでは除く。

 納期を守るためには、コンテンツを減らす(使いまわしを含む)、人間を追加投入する、という変数をいじるしかない。それを考えるのがプロデューサーだし、プロマネの連中となる。
 余談ですが、厳しい納期を守りつつコストまで圧縮しようとすると、オフショア開発という選択肢に走りがちで、これは使い方を一歩間違うとFF14のような大ディザスターとなる危険もある。
 大ディザスターのあとに何が来るか、というと今FF14がやってるように「サルベージ」作業というものが必要になる。ちょっと考えればわかるように、これにはすげえ金がかかる(FF14のように先発メンバーが全員交代させられたらなおさら)。もう悪評がたってるのでのんびりなんかしていられない、「時間」がより一層「敵」になることも理由のひとつにある。
 だからシステム開発は最初からうまく行ったほうがよいに決まっている。

 本題です。

 昨今「主流」のゲームでは、プロデューサーが「多数のプレイヤーが実際見るかどうかもわからないものに金使うんじゃねえ!」と怒るのだそうだ。

 Half-life 2か何かの例で、エンディングに多大な労力をかけたものの、実際にそこまでたどり着くプレイヤーというのは全体の何割もいない。レンタルで遊ぶ連中の多いあちらではエンディングを観ない割合はさらに多い。そういう反省があったようだ。

 よって、大々的にお金のかかる「シネマティック」を入れる場合はまずフロントエンド、一番最初に見せることになる。最近のヴィデオ・ゲームのオープニングは確かにしゃれにならないくらい派手で精緻なものになっていますね。 

 そこから、ゲイダーさんもよくインタヴューでしばし黙り込む、「・・・。」となる部分なんですが、「主流」のプロデューサーの目から見ると、「分岐」ってなんだよ?となる。

「分岐ってなんだよ? それはあれか、半分のプレイヤーはコンテンツ群Aを目にしないってことか? 残りの半分はコンテンツ群Bを最後まで観ないってことか?
 なんでそんなことするの? 無駄なものに倍の要員と倍の時間と倍のコスト(全部一緒です)かかるじゃねえか!」 

 BioWareのCRPGのような「選択の幅」を重視するゲームでは、伝統的に「任意のプレイヤーの目に決して触れない」コンテンツがある。往年のJRPGなどは、むしろ「普通なかなか見ることができない」、やりこみプレイヤーしか目にできないものを「ご褒美」としてこっそり混ぜていた。

 となると、って混乱してる?
 単純な算数やってみよう。かなり極端に単純化します。

 ベースとなる開発コストは「シネマティック」重視にする以上、ふたつのケースで大差ないとみなしましょう。欧米の労働市場は流動性が高いので、ゲーム業界といっても人件費には日本と違って「相場」があるはずです。

 対照用としてHalf-life 2やDead Spaceのようなゲームを考える。基本「分岐」はしない。全てのプレイヤーは巧拙あるとしてもエンディングまで行けば、100%同じものを目にするとします。

 開発コストは1000とする。プレイヤーが500とする。500人に見せるため1000かかる。ひとりあたりコストは「2」ですね。

 BioWareゲームは全部ふたつのパス(道筋)があるとする。とはいえ共通部分があるのでパスAとパスBでコストが200%かかるわけはないんで、150%にしましょうか。
 開発コストは1500で500人に見せるためのひとりあたりコストは「3」ですね。

  ところがパスAしか見ないプレイヤーAはコスト100%分しか見ていない。同様にパスBしか見ないプレーヤーBも100%。なんでトータル150%かかるんだと。

 パスの数を複雑怪奇にしていけば200%超える可能性だってある。できるだけ共通化したって100%にはならない。とにかく上の例よりコストがかかる。コスト=時間=人員です。

 つまりゲームの収益を考える「主流」プロデューサーの目から見れば、「分岐」なんてバカのやること。

 そしてゲイダーさんは、ヴィデオ・ゲームのコンテンツ創造のコストの単価自体が昨今極端に上がってきているので、コンテンツ・へヴィー、さらに言えば「分岐」を売りとしているCRPGにとって「冬の時代」になりつつあるが、この流れには「もう抗えない」と言っていた。

 そんなハイテクなんてやめて、一部JRPGが今でも踏襲しているようにローテクのままでRPGを作ればいいじゃないかという発想は、ゲイダーさんによれば「ラッダイト運動家」になる。レイジ・アゲインスト・マシーンになる。倉本某のように北海道の山の中で電気使わず生活しろとなる。そのあなたの作品が電波使って流れて儲けてる、というところは不思議と誰も指摘しない。

 つうかそれじゃ今や数が売れない。「ニホンイチ」や「ファルコム」がいくらがんばったって、日本でしか数百万本売れない(いや、それはそれですごいが)。
 CoDシリーズも、Half-life 2も、Portal 2も、GTAもRDRも、FF13も、世界各領域で数百万本売れる。商売でいったらお話にならない。
 「ニホンイチ」や「ファルコム」が「分岐」してるとは言っていない。基本分岐しないのですがこれらJRPGは「シネマティック」の「主流」ではないということを言いたいだけです。
 
 でも、コストが安ければ目標収益も安く済むんじゃないの?
 「収益のことを言うなら分岐などさせるな」と言い返されて終わる。

 ゲイダーさんがフォーラムで言ってました。「Originsは300万本以上売れたから成功した、DA2は200万本じゃダメ」という論調に対し、「1年でできてしまうCoD最新作に比べ、5年を費やしたOriginsはCoDの五倍売れなきゃ本来元は取れてないよ」と。CoD最新作は一千万本だろうから、Originsは五千万本売れないといけない。WoWでも達成してないのに、そりゃ無理だ(苦笑)。

 かほどさように、FPSなどと違って、CRPGは「儲かる」(lucrative、ルークラティヴ)ジャンルじゃ元々ないんですね。ニッチなんです。

**********

 「選択の幅」は、映画やTV洋ドラマの翻訳が文句なしのレベルなのに、ヴィデオ・ゲーム(RPG)の翻訳水準がひどいのはなぜ、という問いの解のひとつでもありますね。

 予算が違うので翻訳者の水準が違う、というだけじゃないんです。
 それは以前も、サイマルの通訳者が軍事用語になるとメチャクチャやってしまうから違うと書いた。オサマ暗殺のニュースはCNNで何日も垂れ流しで観たが、トップレベルの同時通訳者だろうけど、かなりひどかった。同時通訳のハードルが高いのは百も承知で言っている。

 映画やドラマなどのリニアの作品は一回か二回見れば意味は完璧にわかるはず。あとはテンポ良く、セリフの時間を気にしてわかりやすくできるかどうかという、日本語の巧拙の問題。
 字幕でも吹き替えでも根本は一緒でしょう。

 ヴィデオゲームはいきなりスクリプト渡されてやれといわれてるんでしょう。プレイもしてないのに無理だよ。
 私ごときがやってるように、膨大な時間かけてプレイしたら、ちょっと英語に自信があれば誰だってできるはずだ。
 だがそれも許されない。納期=コストだから。

 この納期、コスト、人員の関係を打ち砕けるのは、「趣味」、「好事家」、「ボランティア」。
 つまりコストと人員の関係が成立しない「酔狂」な人たちが登場しないといけないんですね。

 **********

 MMOも同様だ。一般に「分岐」しない。DDOの開発者は上とまったく同じ論拠で「意図的にしない」と言っていた。MMOだとプレイヤーの行動の統計が自由に取れる、またプレイヤーは功利主義者が大多数、なので「結局誰も得にならないと思って行かないパスBなんて作らないよ」と言っていた。
 その点では、(背反する)ふたつのワールドを作ったAIONなどは大英断だと思う。コスト圧縮のノウハウを駆使しまくってるんだろう。
 多数のパスを用意すると宣言していたBioWareのSWTORもきっとそうだ。開発はかなり苦戦してるんだろうけど・・・。

 昔、MMOのレイドは敷居が高いと思って、ぐずぐずと参加していなかったとき、ある仲間から「このゲームで開発者が最もコストをかけているのはレイドだ。そのレイドを試さないなんてお前は頭がおかしい」と言われ、目から鱗がぼろぼろ落ちたことがある。
 あの一言でその後はレイドに躊躇なく参加する気になり、おかげで一生忘れられない経験ができた。本当に感謝しています。
 マルチプレイってのはソロでは味わえない、そういう貴重な体験もできるんですけどね。

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コメント

DA2でコンパニオン以外のキャラクターの表情がニュートラルなのもコスト削減でしょうね。
どんな台詞を喋らせても良いようになっている。

MMORPGでも複数の選択肢を用意するのは割と以前からあると思いました。
たとえばEverQuestでは、種族からしてイーヴィルとグッドに分かれていて、
グッド側の方が最初楽なので、イーヴィル側でプレイした事がないというプレイヤーが大多数でした。
あるいはFreeportと言う拠点都市で、堕落したパラディン(多数派)に味方するか、信仰を堅く守る少数派パラディンに味方するか。
当時の最強武器を取るためには少数派の評判を最高まで上げないといけませんが、そうすると当然堕落パラディンからKoSになって街の大通りが歩けなくなる(もちろんそのために地下通路が用意されてある)。

あるいはNPCの所属派閥が三竦み状態で、どれか2つとは仲良くできるけれど後1つは必ずKoSになり、しかもレイド対象のダンジョンで取れるアイテムはいずれか一つの派閥でしか使えないとか。
プレイヤー全員がマンチキンのMMORPGで、いかにバランス良く選択させるか
(どっちに美味しい餌を撒くか)というところがデザイナーの腕の見せ所でした。

今のWoWもそうですね。通常のプレイヤーは、用意されたコンテンツの約半分しか消費しない。今は違いますが、かつてはとプレイヤーに一方でのプレイを半強制していました。
これは開発に莫大な予算をつぎ込める会社でないと対応出来ないでしょう。AIONはその点韓国NCSoftという強大な会社ですし、WoWは言うまでもなく。

 EverQuestは、まさにMMO食わず嫌い時代だったので、経験ありませんでした。WoWはフリープレイでそこそこやってたけど、アメリカのあんちゃんに粘着されそうになったのと、やっぱあのヴィジュアルが・・・。

 そうですか、やはり名作の誉れ高いものは、そこまでやってるんだ。
 当時のモデルやグラフィックだと、一旦基盤が出来るとわりとコンテンツを増産しやすいのもあったんでしょうね。
 弁護するとDDOは当時画期的なアクションRPGだったので、(あとスタートダッシュにしくって不人気で(笑))そこまでコストかけらんなかったんかな。
 
 そんなのわかってんだよ、でも現状のマーケット環境と開発コスト高騰でやりたくてもできねえんだよ。
 と、堕落したパラデ・・・、デヴェロッパーの声が聞こえてきそう。
 いや、これが「正統派」だと信じて疑わない「主流派」は、その点でまさにパラディンかもしれない。
 
 勉強なりました。 

AIONは売り捨てでバランス調整云々は完全に失敗してます。
1vs1の状況でうまく調整するのはどうしても難しいのはあるとしても、
直す気まったくないですね。うんこですうんこ。
結局初期動員稼げれば良いやってやつなんでしょう。
チョンゲですしおすし。

3すくみのバランス調整がそれなりにうまくいってたゲームとしては
PlanetSideが挙げられるけど、
あれはあれでゴミ中華が大量流入して勝ち馬しまくって荒らして
ゲーム側のデザインをぶっちぎる状態になって色々終わりましたな。

なんだかんだで複数勢力ってデザインでうまくいってるのはFEZです。
まぁ自勢力が勝っててもあんまり良いことないのだけどね。

 うんうん、Aion初期一ヶ月しか遊んでないから物言う権利ないと思ったけど、デザインはわりとチャレンジングかなと。
 でもMMOは功利主義プレイヤーが雪崩を打つと破綻しますよねー。
 DDOはその手の嫌な気持ちになったこと少なかったけどかたくなに一本道ですしね(ああ、レンジャイをまじめに初期からやってないから嫌な気持ちにならないですんだのか)。
 
 う、でも読んでるんだ! 
 え、なんで?
 そこが一番驚いた。

 

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