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2011年5月29日 (日)

「空気」の研究

 例の「窮屈さ」という「超超訳」されてしまった研究論文をシェアしていただきました。ありがとうございました。

 まだいっぺん読んだだけなものですが、アカデミックな論文らしく最初だけ読んでも中身がわかる。これは私が「一を聞いて百を知る」と気取っているのではなく、アカデミックな論文とはそういうものだ。

 “tight”—have strong norms and a low tolerance of deviant behavior
  “loose”—have weak norms and a high tolerance of deviant behavior.

 norm(s)の研究だったんですね。「空気」の研究 (文春文庫)は山本七平氏の名著ですが、あれは日本という社会を支配する雰囲気、規範、暗黙の了解、いわゆる「空気」について書かれたものでした。

 別に「空気を読む」のは日本人だけじゃない。ちょっち意味違うけど「ボートを揺らすな」 "Don't rock the boat."はイギリス人だって言うし。

 私なりに超訳すれば、だから「空気読め!」と言われる、またはそう言われることを予期して規範から逸脱しそうな行動を自発的に抑制している、よく言えばセルフ・ガイデド、自分なりの(社会全体からこれなら許容されるであろうと信じる)基準を持っていて、それに従って行動する構成員が支配的な社会がタイトで、逆にそういった規範をあまり気にせずに済み、「わしゃ知らんがね、好きにさせてもらうがね」という行動を誘発しそうな社会がルーズということだ。

(...) individuals in nations with high situational constraint will have selfguides
that are more prevention-focused and thus will be more cautious (concerned with avoiding mistakes) and dutiful (focused on behaving properly), and will have higher self-regulatory strength (higher impulse control), a higher need for structure, and higher self-monitoring ability. Put simply, the higher (or lower) degree of social regulation that exists at the societal level is mirrored in the higher (or lower) amount of self-regulation at the individual level in tight and loose nations, respectively.
(脚注番号は省略しました)

 論文のサマリー・感想については、シェアしていただいたブログの方のご意見を読まれるがいい。私も同意見だ。基本的に「あたりまえのこと」をデータで立証するのが統計学だ。

http://emisblog.exblog.jp/12670228/

 当然反論としてありえる「アジアが」とか「宗教が」とか「GDPが」などというファクターをひとつづつ丁寧にはがしていく(つまり、この仮説に普遍性を持たせようとする)作業こそ、実は統計学の醍醐味なんですね。モデリング。あたかも高級メイジのプロテクション・スペルを一枚づつはがしていくDnDの魔法戦のようなものだ。
 そこが統計学の一番面白いところだし、それに比べたら統計値を計算するなんて付録みたいなもんです。

 ラーキング・ヴァリアブル(ズ)、隠れ潜む要因が怖い。これについては日本語の題名はちょっちキライなので無理して原語で読んだ、あの大相撲八百長問題を「統計的に君ら八百長してるから」とずっと前に喝破した「ヤバい経済学」(Freakonomics)などを読めば、あるいは感じがつかめるかもしれない。

 ただ「統計(学)で犯罪を立証するのは危険だからやめろ」、というのが少なくともアメリカでは「空気」。もしかしたらいかさましていないコインの表が100回連続で出るかもしれない。その可能性はゼロではない。(もちろん八百長は犯罪ではない。大相撲をベースにしたトトカルチョが合法化されると、即座に八百長は犯罪になるが)。
 だから統計的に攻撃を受けまくっているタバコ会社はいつまでも「無実」を主張しているわけだ。なおタバコ会社の主張にも「ラーキング・ヴァリアブルズ」が使われるのは多い。
 タバコ自体に害はないが、タバコをよく吸う人には生活上健康を損なうよからぬ習慣がある(飲酒とか、不規則な生活とか)というもの。どんな顧客に商品売ってるつもりなんだよ、という気もするが、苦肉の策でしょうね。

Lurking variable: A variable that has an important effect and yet is not included amongst the predictor variables under consideration.
Perhaps its existence is unknown or its effect unsuspected.、

 残念なことに個人的に興味しんしんなフィンランドは参加していなかった。日本と本当に似ているのか知りたかったんだが。

 さて、ではどこぞの記者の「超超訳」を尊重して、研究対象33カ国で最も「窮屈ではない」国はどこか。

 ユークレイン(ウクライナ)。

 ふーん・・・。
 やっぱ、「窮屈さ」とは全く関係ないな。少なくともそれがコノートする、というか誘導しようとしている善き価値観、「束縛から解放され、リベラルな気風を謳歌する、とってもすてきな優しい社会」ではないだろう。そんなこと言ったら逆にユークレインの人が驚くんじゃないのか?
 オレンジ革命の余韻でまだ国全体が熱気を帯びているのかもしれないし、「ざけんなロシア」という気骨も関係してそうだし。「自分たちはそうありたい!」というのはあるかもね。

 もちろんお国柄として「奔放さ」とか「自由さ」は当然ありそうだが、それは「自分の面倒を見るのは自分しかあてに出来ない」過酷な環境も関係ありそうだ。 

 それで言うと、ユークレインと同じく「ルーズさ」が高いのはエストウニア(エストニア)だ。日本人のなぜか大好きなバルト三国のひとつだ。
 んじゃあ、「ロシアなにくそ」だと、ルーズさが高いかというと、それもまた嘘。ポーランドは比較的タイトという結果だ。

 ちなみにロシア自体は研究に参加していない。
 日本人の(つうか、女子の)大大大好きなスイッツァランド(スイス)も参加していない。予想では「タイトなはず」。

 国境で警備隊がマシンピストル構えながら入国者のパスポートを確認する国がルーズであるわけはないと思うんですが。まあ、そこまで言うといいすぎか。
 もうひとつの根拠としては周りを取り囲む、独、仏、伊がそれぞれタイト寄りの結果だから。

 まんまタイトとルーズでいいじゃん。

 少なくとも戦後生まれは中学までは英語教育受けてる国なんだから、勝手に「国民は英語が苦手」な前提でくだらない超訳つけないでよ。

 私のはいいんだよ。たかがヴィデオ・ゲームだ。ゲームで人は死なない。ゲームが原因で戦争は起きない。

**********

 そして朝日新聞。

 原子力・立地本部長の武藤栄副社長は「首相の了解がなくては注水できないという空気だと伝わり、本社と所長が合意した。理解いただけるまで中止しようとなった」と説明する。

 私はまっとうな愛国者ですが、こういうところはこの国はほんとーに大嫌いだ。

 「空気」で人は死ぬ。死ぬどころか福島はポスト・アポカリプスになっちまうかもしれなかった。

 「空気」で戦争はじめて、あげくA-bomb二発も落とされて、「過ちは二度と繰り返しません」?

 繰り返してるじゃねえか。すっかりそのまま。

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